1. 在宅医療の現場から~住み慣れた自宅で最期をむかえるために~
  2. 6月 長野・松本なんでもありの勉強会 予定

事務局雑感
◯一冊のアルバムから
96歳の女性が亡くなった。15年以上のお付き合いだった。殊に最期の10年は認知症状が現れ、盗られ妄想、幻視がひどく、私も苦労したが、一番大変だっ たのはやはり不安の中を1人で暮らさなければならないご本人だったろうと思う。その彼女を理解する大切な手段になったのが、アルバム。
彼女は、70歳代に写真を整理して、簡便なアルバム3冊にまとめてあった。月1回の訪問時には度々このアルバムをみながら、若いころのこと、ご主人のこ と、仕事のことなどを話してくれた。その内容をイメージし理解するのに、アルバムはとても役に立ち、認知症になってからも趣味の日本舞踊を見に行ったりし た。
終活の一つとして持ち物の整理をしている人も多いと思う。その中で写真の整理は一仕事。全部破棄する人もいると思うし、大切な写真だけ残して一冊にまとめ る人もいるようだ。アルバムから全て剥がし、綺麗な箱に入れ、「棺に入れて」という人もいるだろう。人それぞれだが、将来自分が他人のお世話にならなけれ ばならなくなった時、自分の生きてきた道、経験、仕事、大切にしていたものなどを周囲の介護者に理解してもらうために、アルバムはとても有効と思う。たく さんの写真は要らないが、自分の来し方を理解してもらい、より良い介護を受けるために、一冊のアルバムを作ったら良いと思う。

もう大分前のことだが、認知症の男性の後見人をした。その人が元気だった頃は、どんな仕事をしていたのか、好きなことは何かの意思疎通が困難だったが、持 ち物の中に数葉の写真があり、彼は音楽がとても好きだったこと、ギターを弾いていたことが分かった。私たちはカセットとテープを用意し枕元で常に音楽がか かっているようにした所、表情が穏やかになり笑顔も見られるようになった。
たくさんの写真はいらない。自分のことを分かってもらえるようなアルバムを編集しませんか。将来きっと役に立ちますよ。